この記事は、親の状態が変わってきて、今の要介護度でサービスが足りるのか迷っている家族に向けたものです。先に結論を書きます。状態が変わったなら、次の更新を待たずに区分変更を申請できます。ただし、申請すれば要介護度が上がる、とは限りません。判定の材料は、認定調査と主治医の意見書。だから調査の前に、ふだんの様子と介護の手間を数で書き出しておくのがいい。内容は 2026 年 9 月時点の法令と厚生労働省の資料、当サイトが数えた家族の介護相談によります。
認定と区分変更の相談 63 件。要介護度のことと手続きのことが、ほぼ同じ件数で上位 2 つ
当サイトの集計で、要介護認定と区分変更の相談は 63 件でした。上位 2 つは「使える条件と、要介護度のこと」と「手続きや制度の使い方」。この 2 つは、ほぼ同じ件数です。 続いて「家族やきょうだいとの分担」「体調や病気、薬のこと」。5 番目に「本人が嫌がる。どう話せばよいか」が入っています。
要介護度と手続きが並ぶ。家族が迷っているのは、今の区分で何が使えるのかと、どう申請するのか。この記事はその 2 つに絞りました。本人の前で言いにくいことの伝え方は、下の 5 項目の 4 つめに書いています。 並びは要介護認定と区分変更の話題に置きました。
区分変更は有効期間の途中でも出せる。有効期間が終わる日の 60 日前からは扱いが変わる
介護保険法 第 29 条は、介護の必要の程度が今の区分とは違う区分に当たると考えるとき、区分の変更を申請できると定めています。有効期間の途中でもかまいません。江東区の案内も、心身の状態が大きく変わったときは「更新時期を待たずに」申請できると書いています。
迷いやすいのは、次の更新が近いときです。
| 今の状況 | 考え方 |
|---|---|
| 有効期間が終わるまで 60 日より長い | 区分変更を申請できる。判定が出るまで、平均でひと月あまりかかる |
| 有効期間が終わる日の 60 日前から当日まで | 更新の申請ができる期間に入っている。この間に区分変更を出し、区分を変える必要がないと判定されたときは、更新の申請として扱われる |
| 今は要支援の認定 | 江東区の案内では、要介護の認定の新しい申請として扱う。申請書は区分変更のものを使う |
有効期間の長さは、介護保険法施行規則で決まっています。新規の認定は原則 6 か月、更新は原則 12 か月。どちらも市区町村が、専門家の意見をもとに短くも長くもできます。 区分変更の申請書には、今の区分と有効期間の満了日を書く欄があります。満了日は、申請の前に手元の書類かケアマネに確かめてください。
申請から判定まで。法律は 30 日以内、全国平均は 39.9 日
- 申請市区町村の窓口へ。ケアマネの事業所や地域包括支援センターが代わりに出すこともできる
- 認定調査調査員が本人に会い、本人と家族から聞き取る。依頼から実施まで平均 11.1 日
- 主治医の意見書市区町村が主治医に意見を求める。依頼から入手まで平均 17.9 日
- 一次判定調査の結果などをもとに、コンピュータで判定する
- 二次判定保健・医療・福祉の専門家の会議が、一次判定と意見書などをもとに決める。申請からここまでの全国平均は 39.9 日
- 結果の通知法律は申請から 30 日以内。認定は申請した日にさかのぼって効く
流れは介護保険法 第 27 条・第 29 条と厚生労働省「要介護認定はどのように行われるか」によります。日数は厚生労働省が公表した令和 6 年度の申請分の全国平均で、新規・更新・区分変更を合わせた値です。市区町村によって違います。
介護保険法 第 27 条は、申請のあった日から 30 日以内に結果を出すよう定めています。区分変更にも同じ条文が使われます。調査に日数がかかるなど特別な理由があれば、見込みの期間と理由を知らせたうえで延ばせる決まりです。
実際はどうか。厚生労働省が公表した令和 6 年度の申請分では、申請から二次判定までの全国平均が 39.9 日でした。30 日以内に収まったのは 22.8%。新規・更新・区分変更を合わせた数です。ひと月あまりかかる前提で、その間のサービスの組み方を担当と決めておくと慌てずに済みます。
いちばん日数がかかっていたのは主治医の意見書で、依頼から入手まで平均 17.9 日。厚生労働省の事務連絡には、外来を受ける時期と市区町村からの依頼の時期が合わないと日数がかかる、という医療機関の声が載っています。次の受診のときに、区分変更を申請するつもりだと主治医に伝えておくとよいでしょう。
認定調査の前に書き出すこと 5 項目
要介護度は、原則として介護の手間の量で判定されます。厚生労働省の解説は、要介護認定は介護サービスの必要度を判断するもので、病気の重さと要介護度の高さは必ずしも一致しない、と書いています。 認定調査の基本調査は 74 項目。書き出すのは、その手間が調査員に伝わる材料です。全部でなくてかまいません。
1. 何が、いつから変わったか
区分変更の申請書には、心身の状況の変化など、申請の理由を書く欄があります(介護保険法施行規則 第 42 条)。「3 月に転んでから、1 人でトイレに行けなくなった」のように、きっかけと時期を 1 行で書いておきます。
2. 手間がかかる場面と、その回数
厚生労働省の認定調査員テキストは、「ときどき」「頻繁に」のような人によって量が違う言葉ではなく、「週に 2、3 回」のように数で頻度を書くよう調査員に求めています。家族の側も数で言えるほうが伝わる。 夜中に起こされる回数、トイレの失敗、同じことを何度も聞かれる回数。1 週間ぶんメモを取っておくと、そのまま渡せます。
3. 調査の日と、ふだんの違い
調査の日だけ、本人がしっかり受け答えすることがあります。テキストは、多くの項目では、その日の様子がふだんと違うときは、おおむね過去 1 週間でより多く見られた状況で選ぶとしています。徘徊などの行動の項目なら、おおむね過去 1 か月の頻度が基準です。「できる日もあるが、たいていはできない」なら、そのとおりに伝えてかまいません。
4. 本人の前では言いにくいこと
テキストは、本人と介護者の双方から聞き取るよう努め、必要なら別々に聞く時間を設けるよう工夫する、としています。本人の前で話しにくいことは、先にメモにしておくと渡しやすい。 家族が立ち会える日に調査を入れてもらうことも頼めます。テキストは、介護者がいる家では、介護者が不在の日を避けるよう書いています。
5. 主治医に伝えておきたい変化
意見書は主治医が書きます。転んだ回数、食事の量、夜の様子。主治医が知らない変化は、意見書に書きようがありません。次の受診で短く伝えるか、メモを渡しておきます。医療の判断そのものは主治医の役目です。
区分変更で、要介護度が上がるとは限らない
判定は、調査の結果と意見書をもとに、全国一律の基準で行われます。判定に使う時間は、家で実際にかかっている介護の時間とは別のものさしです。判定の結果、今と同じ区分のままのこともある。介護保険法施行規則 第 42 条 4 項が決めているのは、有効期間が終わる日の 60 日前から満了日までに区分変更を出した場合。区分を変えなくてよいと判定されたら、更新の申請として扱われます。
今より軽い区分になることも、仕組みの上では起こり得ます。介護保険法 第 29 条が申請の条件にしているのは、今の区分「以外の区分」に当たると考えること。上がる向きに限っていません。判定は、同じ条の 2 項で使われる第 27 条のとおり、国の基準に従って改めて行われます。 さらに第 30 条は、介護の必要の程度が下がったと市区町村が認めるときは、市区町村の側から区分を変えられると定めています。
気をつけたいのは、結果が出る前にサービスを増やすときです。認定は、申請した日にさかのぼって効きます。家で使うサービスには要介護度ごとに 1 か月の上限(支給限度額)があり、超えた分は全額が自己負担です。 結果が思ったより軽い区分だと、増やした分が上限を超えることがあります。増やす量と時期は、担当のケアマネジャーと先に決めてください。江東区の案内も、申請の前にサービスの変更の内容と時期をケアマネとよく相談するよう書いています。
結果に納得できないときは、都道府県ごとに置かれた、介護保険の不服を扱う機関に申し立てる仕組みがあります(介護保険法 第 183 条・第 184 条)。期限は、結果を知った日の翌日から 3 か月以内です(同 第 192 条)。
ケアマネ・包括の相談 211 件でも、手続きは 3 番目
当サイトの集計で、ケアマネと地域包括支援センターの相談は 211 件。いちばん多いのは「ケアマネや施設とのやりとり」で、3 番目が「手続きや制度の使い方」でした。 デイサービス・デイケアの相談 225 件でも、「使える条件と、要介護度のこと」が「介護する側の疲れと、後ろめたさ」と同じ件数で 2 番目に並びます。区分と手続きの話は、家で続ける家族の相談のあちこちに出てきます。
江東区の案内では、申請は原則として本人か親族が行います。介護保険法 第 27 条は、居宅介護支援の事業者(ケアマネの事業所)や地域包括支援センターなどが、手続きを代わりに行える、という定めです。担当がいるなら、先にケアマネへ。まだいないなら、地域包括支援センターに聞けます。ケアマネと包括の役割の違いは在宅介護を続けるか迷ったら、ケアマネと地域包括支援センターに聞くこと 5 つに書きました。
施設も考え始めたら
道は 2 つあります。家で続けることも、施設を探すことも、同じ重さの選び方です。どちらを選ぶかは、読む人とご家族が決めること。 要介護度によって使える施設が変わるので、区分変更の結果は施設を考えるときの材料にもなります。施設の種類と使える要介護度は特養・老健・有料老人ホーム・サ高住の違いに、費用の仕組みは介護施設の費用の仕組みに書きました。