この記事は、介護の仕事をしていて、今の職場を変えるか、資格をどう取るかで迷っている人に向けたものです。先に結論を書きます。変える前に、今の職場で聞けることが 3 つあります。処遇改善加算がどう配られているか、昇給の仕組み、資格を取るときの支援です。どれも厚生労働省の加算の通知に書かれていることで、聞いてよいことです。 次の職場の数字も、一部は公表されています。数字は介護労働安定センターの調査と厚生労働省の通知から取りました。2026 年 9 月時点の内容です。
前の介護の職場を辞めた理由、いちばん多いのは人間関係で 27.3%
介護労働安定センターの令和 7 年度 介護労働実態調査は、2025 年 10 月 1 日時点で、介護の事業所で働く 20,675 人から回答を得ています。 そのうち、直前の仕事も介護だった人に、その前の職場を辞めた理由を聞くと、いちばん多いのは「職場の人間関係に問題があった」で 27.3% でした。次が「事業理念や運営のあり方への不満」で 21.0%、「他に良い仕事・職場があった」が 17.2% と続きます。
人間関係と答えた人の中身を見ると、45.8% が「上司や先輩の指導や言動がきつい、パワーハラスメントがあった」を挙げています。 「収入が少なかった」は 15.7%。4 番目です。上の 2 つは、人と運営の話です。一方で、回答者全体に聞いた今の仕事の悩みとしては「人手が足りない」が 52.3%、「仕事内容のわりに賃金が低い」が 38.1% と多く出ています。聞いた相手と設問が違いますが、辞めた理由と、日々の不満は同じではありません。
今の事業所で続けたい人は 51.9%、決めかねている人は 27.5%
同じ調査で、今の事業所で働き続けたいと答えた人は 51.9% でした。「わからない」が 27.5%。別の法人や企業に移りたい人は 9.5% です。 迷っている人は少なくありません。4 人に 1 人より多い。
働き続けるのに役立っている取り組みとして多かったのは、休みや勤務日の変更がしやすいことと、人間関係が良い職場づくりでした。その取り組みが職場にある人のうち、それぞれ 65.5%、65.4% が役立っていると答えています。 迷いの中身が「休みが取れない」なのか「上司とうまくいかない」なのかで、確かめる先が変わります。下の 5 項目は、そのための書き出しです。
処遇改善加算は 2024 年 6 月に一本化、2026 年 6 月に広がった
処遇改善加算は、介護の仕事をする人の賃金を上げるために、事業所の介護報酬に上乗せされるお金です。 厚生労働省の通知によると、それまで 3 つに分かれていた加算が 2024 年 6 月に一本化され、「介護職員等処遇改善加算」になりました。
2026 年 6 月からは、対象が介護職員だけから、介護従事者へと広がりました。訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援(ケアマネの事業所)などにも加算ができています。 厚生労働省の資料によると、介護従事者に幅広く月 1.0 万円、生産性向上や協働化に取り組む事業者の介護職員にはさらに月 0.7 万円の上乗せで、定期昇給 0.2 万円を含めて介護職員について最大月 1.9 万円(6.3%)の賃上げになる措置。これは最大の値です。加算は事業所の中で柔軟に配分できるので、一人ひとりの額は事業所の区分と配り方で違います。
加算を取るには、事業所が満たす条件(キャリアパス要件)があります。どの区分でも、職位や仕事の中身に応じた賃金の決まりと、研修の計画を整え、全ての職員に知らせることが条件です。 この条件が、今の職場で聞けることの足場になります。2026 年度は、一定の条件を満たす事業所に限り、整えることを約束して先に加算を取り、2027 年 3 月末までに整えることが認められています。
職場を変える前に確かめること 5 項目
当てはまるものだけでかまいません。1 から順に見る必要もありません。
1. 自分の賃金のうち、加算で上がった分を書面で聞いたか
厚生労働省の通知は、加算を取る事業者に、賃金改善の方法を職員に知らせ、職員から問い合わせがあれば書面を使うなど分かりやすく答えるよう求めています(努めることとされています)。 「加算が増えたのに給料が変わらない」と感じたら、まず自分の分を聞いてください。答えを見てから決めても遅くはありません。
2. 昇給の仕組みが、就業規則などに書かれているか
加算の中ほどより上の区分(加算Ⅲ以上)では、経験・資格・評価のどれかに応じて昇給する仕組みを書面で整え、職員に知らせることが条件です。 勤続年数で上がるのか、介護福祉士や実務者研修で上がるのか、試験や人事評価で上がるのか。書いてある場所を聞けば、何年後にどこまで上がるかの見当がつけやすくなります。
3. 資格を取るとき、シフトや費用の支援があるか
研修の条件(キャリアパス要件Ⅱ)には 2 つの型があります。研修と能力の評価をする型と、資格を取る支援をする型です。後者の中身は、研修に出るための勤務シフトの調整、休暇、受講料や交通費の援助です。どちらの型でもよいので、資格の支援がない事業所もあります。実務者研修を考えているなら、先に聞いておくと予定が立てやすい。
4. 次の職場の候補を、公表システムで見たか
厚生労働省の介護サービス情報公表システムには、事業所ごとの基本情報が載っています。老健や訪問介護の「読み解き方」のページでは、職員の数、前年度に辞めた職員の数、資格を持つ人の数、経験年数が読む項目に挙がっています。 老健の例だと、辞めた人の数は常勤と非常勤で別々。人数が近い 2 つの事業所なら、見比べる手がかりになります。
加算の上の区分(加算Ⅰ・Ⅱ)を取る事業所は、職場環境をよくする取り組みを、公表システムの「事業所の特色」欄に書くことになっています。欄が空なら、面接で聞けばよい。
5. 辞めたい理由が人間関係なら、職場の外に相談したか
職場の中で言いにくいことは、外に持ち出してかまいません。厚生労働省の総合労働相談コーナーは、いじめ・嫌がらせ、パワハラ、配置転換、賃金の引き下げなど、働くことの問題を幅広く受け付けています。 予約制ではありません(事前に連絡することがすすめられています)。無料で、面談か電話で相談でき、各地の労働局や労働基準監督署の中など 378 か所にあります。法律に反する疑いがあれば、担当の部署に取り次ぐ仕組みです。
今の職場で聞くことと、次の職場で見ること
上の 5 項目を、聞く先と分かることで並べ直しました。次の職場の欄は、厚生労働省の公表システムと面接で確かめるものです。
| 確かめること | 今の職場で | 次の職場の候補で |
|---|---|---|
| 加算で上がった分 | 聞ける(書面などで答えるよう努めることとされている) | 面接で、加算の区分と配り方を聞く |
| 昇給の仕組み | 就業規則や賃金の決まりで見る | 面接で、何に応じて上がるかを聞く |
| 資格の支援 | シフト・休暇・受講料の援助があるか聞く | 公表システムの研修の実施状況の欄(サービスによる)を見て、面接で聞く |
| 辞めた職員の数 | 自分の職場も公表システムで見られる | 公表システムで常勤・非常勤別に見られる |
| 人間関係・ハラスメント | 職場の窓口と、総合労働相談コーナー | 数字では分からない |
いちばん下の行が、前の職場を辞めた理由でいちばん多いところです。数字でいちばん分からないところが、いちばん多い理由になっています。ここは数字の外です。編集部の考えですが、たとえば見学ができるなら、職員どうしの声のかけ方を見ておくのも一つの手です。
資格の道。初任者研修 130 時間から介護福祉士まで
介護の資格と研修は、段を上がる形になっています。下から順に並べます。
| 資格・研修 | 長さ・条件 | 次の段とのつながり |
|---|---|---|
| 介護職員初任者研修 | 10 科目・合計 130 時間と、1 時間ほどの筆記の修了評価 | 介護の仕事の入口の研修 |
| 実務者研修 | 450 時間以上、期間は原則 6 か月以上。昼間・夜間・通信がある。初任者研修を修了していると一部の科目が免除される | 実務経験の道で介護福祉士を受けるときに要る |
| 介護福祉士(国家資格) | 実務 3 年以上(在職 1,095 日以上、実際に働いた日 540 日以上)+実務者研修 | 両方を満たして受験する |
社会福祉振興・試験センターの案内では、在職の日数と働いた日数は、試験の年度の 3 月 31 日まで通算できます。見込みのまま申し込むことができ、2026 年度の第 39 回試験は、2027 年 3 月 31 日までに実務者研修を終える予定の人が対象です。 ただし、実務者研修を終えただけでは受験も登録もできません。実務経験との両方が要件です。
資格を取れば、昇給の仕組みに「資格に応じて上がる」型を持つ職場では、給料に響きます。加算の通知は、この型のとき、ほかの法人で資格を取ってから入った人も昇給する仕組みであることを求めています。資格を取ってから移るか、取る支援のある今の職場で取るか。項目 2 と 3 の答えで決めやすくなります。
家族の介護が始まりそうな人は 50.2%
職場を考えるとき、自分の家族の介護も関わってきます。同じ調査では、今後 5 年の間に家族の介護をする可能性があると答えた人が 50.2% でした。ほぼ半分です。 そのうち 39.8% が、今の職場で家族の介護をしながら働き続けるのは難しいと思うと答えています。
介護の仕事をしていても、家族のこととなると別です。家で続けるときに誰に何を聞くかは在宅介護を続けるか迷ったら、ケアマネと地域包括支援センターに聞くことに書きました。 職場を変えるかどうかは、働く本人が決めることです。変える前に聞けることを聞き、答えを書面で持っておくと、どちらを選んでも後で見返せます。